何かの参考になれば

kaienさんのエントリーを読んで自分の経験が参考になれば、と。
賞によって違いますし、ご存知のことと思いますが、大抵の新人文学賞は、下読みさんによる一次選考→編集者による二次選考→選考委員がいれば選考委員による最終選考を経て受賞作が決まります。少なくとも数百、多ければ数千の応募と戦って勝つ正解は、いまのところ見つかっていません。
しかし私が編集さんや下読みされている作家の方にいろいろ話を聞いているうちに、いくつかのポイントらしきものはあるような気がしてきました。自分が耳にしたことを、参考までに記しておきます。

まずどなたも仰るのが、「誰かの真似になっている(もしくはそう見える)作品は即刻ペケ」ということ。ハルキのよう、ハルヒのようであれば間違いなく落ちます。村上春樹の小説が読みたければ村上さんに依頼すれば良い。どこかで見たような作品はオリジナルを読めばいいわけですから。
ふるいにかけているのは小説のプロたちです。売れているものは大抵読んでいるか、最低でも知っています。彼らの目をごまかすのは大変困難であるといえます。その人だけの何か、選考する人が見たことのない何か、見たことがあっても新鮮な何かが含まれている作品が求められています。

次によく耳にするのが、「日本語になっていない」ということ。これは誤字脱字の多さを言っているのではありません。小説としてきちんと(このきちんと、というのも議論のあるところだと思いますが)読めるものであるかどうか。書き上げた後、自分で音読したものを録音して聞いてみる。他人さまに読んでもらって読めるものになっているかどうか聞くのも一計だと考えます。
ちなみに、校正で修正できるミスは、選考の段階でそれほど大きなマイナスとはなりません(賞にもよると思いますが)。物語として面白いかどうか、が選考の対象となります。


もう一つは、「wikiで調べられるようなことだけを書いてくるな」 ネットで検索する以上のものを送って来い、ということだと思います。各人が持っている強みってありますよね。大学で研究している専門知識、仕事で得た経験、趣味で手にした技、境地などなど、そういうリアルさがあるとないとでは、大きく違うはず。一歩踏み込んだ何かがあるかどうか。私の尊敬する作家は「コスト(もちろん金銭だけを意味するのではない)をかけろ!」と仰いました。

この三つをクリアするだけで、その作品は相当「特別」なものになると考えます。特別はもとより特別なものなのではなく、基本の積み重ねでしかない。そう考える昨今です。