冒頭をちょこっと

気づけば締め切りまでキリのいい日になってますね。まだまだ頑張るぞ〜。ということで冒頭を置いてみたり。
まだしっかり推敲してない段階なので読みにくいかもしれませんが、みなさんの意見を聞かせていただけると幸いです。


・・・・・・あらから何日経ったのだろう。体中の水分を全て流してしまって骨と皮しか残ってないように感じてくる。このまま羽が生えてどこかへ飛んでいってしまうかもしれない。むしろどこか遠くへ飛んでいってしまいたい。
 
 吉原音子はずっと泣き続けていた。食事もほとんどせず、ただ布団を頭からかぶって1日を 過ごしていた。艶のある長い髪、線の細い顔立ちが今ではグシャグシャで渇ききった髪の毛、こけてしまった頬とまるで別人のようになっていた。
 音子がこうなってしまった原因はユキの死によるものだった。ユキは音子が小学生に上がるときに飼い始めた猫だ。9年間一緒に過ごしてきたかけがえのない家族の一員だった。真っ白な毛並みにどこか気品の溢れる顔立ちをとても美人に感じたことを今でも覚えている。吉原家に来た日にその年初めての雪が降ったことから音子が「ユキ」と名前をつけたのだった。
それからは誰よりも長い時間供に過ごし、どんなに辛いことがあってもユキと一緒にいることで元気を取り戻し、楽しいことや嬉しいことは一緒に分かち合ってきた。
 しかしそんなユキも病気には勝てなかった。秋頃から目に見えて元気がなくなり心配になって病院に連れて行くと腎臓の病気と獣医に言われた。治療して良くなったはずだったが、2学期の終業式の日学校から帰ってくるとユキはぐったりしていてもう息をしていなかった。その日はユキが我が家に来て10年目の日だった。そのあとのことはよく覚えていない。心にぽっかりと空いてしまった大きな穴。それを喪失感と呼ぶのかもしれない。両親は共働きで帰りも遅く相談できる人もいなかったので、ただユキの体を抱きしめて泣き続けていたような気がする。あれから2週間が経ち明日からは3学期が始まる。そんなことが一瞬頭をよぎるがすぐに悲しみで塗りつぶされ、泣きながら音子は呟く。
「ユキさえいれば・・・・・・うっ・・・・・・私は幸せだったのに……。ユキに会いたい。一緒にいたいよぉ・・・・・・」
 そして再び深い眠りへと落ちていった。

 気がつくと音子は大きな木の前に立っている。
(なんで私こんなところにいるんだろう?それに私この木どこかで見たことがある・・・・・・。)
この風景に見覚えがあるのだがうまく思い出すことができない。長い時間寝ていたせいで記憶も曖昧になってきたのかもしれないなんて思いながら音子は自分がちゃんとパジャマではない服を着て眼鏡をかけていることに気がつく。
(そうか。これは夢なんだ!)
納得のいく答えに行き着いたその時、頭上から声がかけられた。
「音ちゃん・・・・・・やっと会えたね!」
視線を向けると2mぐらい上の木の枝に猫が座っている。
真っ白で美しいその毛並み。可愛らしい印象の中にどこか大人びたものも感じることができるその猫はユキそのものだった。
「うそ……ユキなの?本当に?信じられない・・・・・・。嬉しい。ユキに会いたかった。会いたかったよぉ」
音子の目にはうっすら光るものが。ユキがしゃべっていることなど疑問に思うことなく再び会えたことを喜ぶ音子。
「毎日淋しい思いをさせてごめんね。でももうこれからは大丈夫だよ。やっと願いが叶ったの」
ユキは少し興奮しながら嬉しそうにそう言った。
「願い?ユキはどんなことを願ったの?私もねお願い事したんだよ。ユキと一緒にいたいって」
「音ちゃんと同じことを私も願ったんだよ。そうしたら叶ったの!だからこれからはずっと一緒にいられるよ」
音子は幸せだった。自分と同じ風にユキも思っていてくれたこと、そしてこうやって夢の中で再会できたこと。いっぱい話したいことや伝えたいことがあったけどうまく言葉にできない。ただ一緒にいるということが何よりもかけがえのないことように思える。
ユキは木の上から音子の元へ降りてくる。音子はユキを大切に抱きしめ、ぬくもりや感触を味わった。
しかしユキを強く意識すればするほど感じてしまう夢から覚めた時の不安。このままいれたらいいのに・・・・・・。
こぼれる涙を止めることができない。音子は一所懸命言葉をつむぐ。
「ユキ会いに来てくれてありがとね。もう大丈夫だよ。ユキに会えなくなることは淋しいけど、いつまでもこのままじゃいられないものね。天国で元気に暮らすんだよ」
「音ちゃん、楽しみにしててね」
ユキの最後の言葉の意味は分からなかったけど意識は夢から現実へと音子を引き戻す。