メタブ!読了したので

いまから感想書きます
(長いので畳みます)

まず、大変楽しく読ませていただきました。
軽妙で読みやすく、ラノベのお手本のような(投稿作としてのお手本かどうかは分かりませんが)久しく自分が読んでない話で、ちっとばかし心が若くなった気分です。
自分が下読みだったら、たぶん二次選考くらいは通すでしょう。そこから先は読んだ人次第なので分かりませんが。

ただ、現状ではいくつか問題もありますので指摘させていただきます。
1・冒頭が弱い
第一話、最初のメタ部の依頼を解決するくだりが、綺麗にまとまってはいるものの、導入部としてはかなり弱いです。この部分をごっそり削除してもプロットは成り立ちます。つまり余分ということです。
最初をなるべく日常系の話として中盤から話を崩していく狙い(たぶん)は分かりますが、クーンツ言うところの「なぜ1ページ目から読者を驚かそうとしないのか」というやつで。とくにこの話が抜群に面白くなるのは2話からなのに、わざわざもったいぶって後に回す理由は無い、と考えます。
話は前後しますが、冒頭のメタ部および水切先輩の描写、ここも少し弱いです。悪くは無いですが、一番重要な冒頭の部分です、完璧になるまで書き直すことをお勧めします。一読しただけでメタ部と水切先輩を完全に理解させることができるくらい、鉄を何度も折り曲げて鋼を鍛えるように、洗練させる必要があります。

2・伏線が弱い
たぶんご承知のことと思いますが、終盤の展開への伏線が弱いです。
なんとなくどうなるか予想はつくんですが、納得はいかない、そんな感じです。瑞霧さんが最終的に出てくるなら、なんらかの形で最初から話にかかわらせておくべきだと考えます。メタな話だから云々というのは、正直逃げでしかありません。
サブエピソードが非常によくできているだけに、長編に統合するにあたっての苦肉の策なのかもしれませんが、結果として長編としての完成度を低くするようでは本末転倒です。

そして最後に、一番の問題は、この物語がメタ構造をとっている必然性がなにひとつないことです。
たとえばこのプロットは、魔法使いの少女と、なんかすごい主人公力を持った少年(なんとかの血を引くとかで可)に丸々置換可能です。メタ構造は小説としては基本的に禁じ手のひとつですから、ちょっと目新しさを加える程度で話に加えるのはあまりお勧めできません。
本当にメタ構造で小説を一本こしらえるなら、最終章(水切先輩の正体云々)は中盤にくるべき部分です。そこから、書き手、読み手、登場人物、神の視点、実存としての本の構造、それぞれを相互干渉可能にしたうえで、話全体を組みなおす必要があります。
これはうまくいけば傑作になりますが、投稿作としては恐ろしく難易度が高いので、あまりお勧めしたくない、というか自分はやりたくないです。
メタ構造について、本当に必要なのか、考えてみるべきだと思います。

自分はまだこの物語を一読しただけですし、おそらく的外れな指摘、読み間違えなどもあると思います。
ですが、読者というものは基本的に作者の意を汲んでくれるやさしさがあるわけでもなく、特にラノベでは読み間違えようの無い簡潔明瞭さが求められると考え、あえて上のように記しました。

くどくどと述べてまいりましたが、この物語には間違いなく可能性があると思います。
2話、久賀先輩のくだりは久々に文章を読んで楽しいと感じましたし、文章には瞠目するような瑞々しさ、光るものがあります。
手直しを加えれば、間違いなく売り物になるレベルであると断言します。

がんばってください。


(どうでもいい追記、誤字指摘)
天上→天井
説経→説教
分子工学部→分子工学は専攻なので学科が正解
マウントポジション→流れや実践性を考えるとニーオンザベリーがより相応しい(これは本当にどうでもいい)